英語で書けるようになる方法 part 3 主語のない文章
なぜ「part 2 サーフィンについての例文」で表現された “思い” を、英語で伝えるには手を加えないといけないのか。
まず第一に、あの文章には主語がありません。英語にするときは、一人称の I か We なのか。二人称の You にするのか。三人称の They か One(代名詞)にするのか。外国人に英訳してもらうにしても、この内容を理解できるのは、日本語のわかるサーフィン経験者だけでしょう。
また仮に訳せたとしても、この情報はもとの姿ではなくなります。意味の通った英文にするには脚色すれすれの意訳がいるからです。
それに意訳ができても意図せぬ解釈を招いてしまう可能性もあります。例えば、
解き放たれた高揚感は凄まじく、いったん味わってしまうと止められない。このようにして人々を虜にするサーフィン。その魅力は何だろうか。
魅力という言葉の意味は、人をひきつけて夢中にさせる力。上記の文章は、サーフィンにおけるそれが何かと問うていますが、訳され方によっては「解き放たれた高揚感」と「止められない」から答えを導き、「自然」や「自分と向かい合う点」ではなく、「中毒性」だと異を唱える読者もいるでしょう。また、
己を受け入れ、自分に打ち勝ち、海と一体になるからこそ、波に乗れるのだ。つまりサーフィンの魅力とは、自分と向き合う点にあるのだ。
この結論では、理解を得られない場合もあります。Strange, weird 「奇妙」だと思われるかもしれません。So what? 「だからなんなの?」という感想もありえます。悲しいリアクションですが、日本的な情報を共有しない者に共感を求めても仕方がないのです。共鳴は起こりえないのですから。
このジレンマを克服し英語で情報発信するには、思いを感じてもらおうとするのではなく、相手に何をして欲しいのか、それを明確な言葉にしなければなりません。情報を言葉にしないまま一方的に共鳴を求めるのではなく、情報を言葉にして可視化し納得させるのです。
このアプローチに必要なのは、自分を知ること。言語化しきれていない “思い” を整理するのです。この場合、そもそも『サーフィンの魅力』で何を伝えたかったのかはっきりさせないといけません。サーフィンの魅力そのものを伝えたかったのは勿論ですが、心底にある意図・動機は何でしょうか。
それは、サーフィンの素晴らしさを知ってほしい、サーフィンの魅力を感じてほしい という思い。しかし、その思いを誰に届けるのでしょうか。もしも思いが強ければ、サーフィン仲間だけでなく、サーフィンを知らない人にも届けたいはずです。
つまりそこにあるのは、サーフィンを広めたい、という志ではないでしょうか。この志を文章で表すためには「サーフィンの魅力」の共感を一方的に求めるよりも、サーフィンを体験してもらう これを目指すべきでしょう。